後日談
ボンゴレリング争奪戦の終結。そして評議会を退けた直後、崩れ落ちるようにツナヨシは意識を失った。
あわてて支える守護者たちの中で、すやすやと眠るツナヨシに皆がほっと息をつく。そして、彼らはチェルベッロ機関が用意したヘリに乗り、ボンゴレ本部へと帰還した。
――――それから三日。長い眠りからツナヨシが目覚める。
Vongola Ring'Battle#α
その手に大空の輝きを
はじめに目に飛び込んできたのは、ゆらゆらと風に揺れる白いカーテン。その先に見える、青く、青く、どこまでも澄んだ大空。
(ああ、今日もいい天気だ)
満足気に笑みを浮かべ、寝返りをうとうとしたツナヨシは思わず飛び上がった。
「ふぎゃ!ったたた。何コレ」
体中を走る激痛にうめくツナヨシに、あきれた声がかえる。
「なんだ、三日も眠ってまだ回復してねぇとはな。またビシバシ鍛えてやるぞ」
「リボーン!」
信頼する家庭教師にツナヨシが笑顔をむける。
「十代目!」
「よかった。なかなか起きねえから心配してたんだぜ?」
そして、ぞくぞくと寝室に入ってくる守護者たちにツナヨシは笑顔でこたえる。
「みんな!ケガは大丈夫なの?そうだ、あれからどうなったの?!」
「落ち着け」
混乱するツナヨシに久々の一発。
「った!ちょっと、リボーン」
涙ぐむツナヨシにリボーンが、その後を話してきかせる。
リング争奪戦の結果。そして正式に確定したボンゴレ十代目。評議会からはこれ以上の関与はなされないこと。守護者たちのケガも重傷ではあるが命に関わるものではなく、安静にしていれば回復すること。そして―――
「ねえ、ザンザスは・・・ヴァリアーはどうなったの?」
「今回の一件は、公にはヴァリアーの反乱として記録された。だから奴らにも制裁が下されることになる。ボンゴレ上層部で決定されるみてーだがな」
「そんな!」
「まっ、といっても今はあいつらもケガで治療中だ。お前もしばらくは安心して、回復に専念するんだな」
ニヤリと笑いかけるリボーンにツナヨシは弱々しくうなずく。
リボーンはやさしい。いつだって、安心させようとしてくれる。けど、マフィアの掟ではファミリーへの裏切り、反乱は重罪だ。
「ザンザス・・・」
つぶやいたツナヨシに予期せぬ所から応える声があった。
「呼んだか?ツナヨシ」
「えっ!」
ハッと声にふりかえると、ザンザスが窓の外、バルコニーに立っていた。
「ザンザス!!てめぇ、何しに来やがった?!」
決着がついたとはいえ、つい先日まで命のやりとりをしていた相手に、獄寺たち守護者は即座に臨戦態勢をとる。しかし、彼は威嚇をものともせず、悠然とツナヨシに歩み寄る。
「カスどもに用はねぇ」
「ザンザス、ケガはもういいの?」
オレを強く惹きつけるのは、その声。かわらぬ光を宿すその瞳。
ザンザスはツナヨシの前にひざまずくと、そっとツナヨシの手をとり、指に光るリングに口づけをおとした。―――――さながら気高い獅子のように。
「っ、ザンザス?」
あっけにとられるツナヨシに彼はめずらしく、しかし、不敵に笑いかける。
(いいだろう、おまえがボンゴレ十代目だ)
そして耳まで真っ赤になったツナヨシに、あわててザンザスを引き離しにかかる守護者たち。応戦に飛び込んできたヴァリアー。騒ぎにあきれる家庭教師。
―――――こうして、ツナヨシのにぎやかで、気のおけない、ボンゴレ十代目の日々がはじまったのである。
END.